動画マニュアルの作り方やメリット。動画が習熟度アップのカギに

近年、ビジネスシーンにおいて、動画形式の業務マニュアルや営業マニュアル、接客マニュアルなど、幅広い動画マニュアルが作成・運用されています。感染症対策として非接触型研修を行う企業が増えたことに加え、動画マニュアルは業務効率改善や社員のスキルアップなど、さまざまな課題解決に有効なツールとして注目を集めています。今回は、動画マニュアル導入のメリットや制作方法について紹介しますので、マニュアル制作時の参考にしてみてください。

 

目次

  1. 動画マニュアルとは
    1. 動画マニュアルの種類
  2. 動画マニュアルのメリット
    1. 視覚的に理解しやすい
    2. 教育レベルに差が出にくい
    3. 時間や場所を問わず視聴できる
    4. コストを削減できる
  3. 動画マニュアルのデメリット
    1. 長いと内容が入りにくい
    2. 初めて制作する際はコストや手間がかかる
  4. 動画マニュアルの作り方
    1. (1)構成を作成し、情報を収集する
    2. (2)台本を作成する
    3. (3)動画を撮影する
    4. (4)ナレーションを入れる
    5. (5)編集する
  5. 動画マニュアルを作成できるツールやサービス
    1. tebiki(テビキ)
    2. Teachme Biz(ティーチミービズ)
    3. パワーポイント
  6. 動画マニュアルの事例
    1. 「Teams」使い方動画
    2. 「株式会社アマナ」shelf操作マニュアル
  7. 動画マニュアルを活用し、業務効率化とコスト削減を叶えよう

動画マニュアルとは

動画ファイル形式で作成されたマニュアルのことを「動画マニュアル」と呼びます。実際の動きを見せられる動画マニュアルは、視聴者がシミュレーション感覚で業務の手順を学べるため、理解度を深めることが可能です。複雑な作業の説明や、扱いの難しい商品のチュートリアルにも適しています。

動画マニュアルの種類

動画マニュアルは、主に新入社員研修やスキルアップ研修で用いられているほか、クライアント向けの製品PRや消費者向けのチュートリアルなど、幅広い目的で制作・運用されています。ここでは、制作事例の多い3種類の動画マニュアルをピックアップします。

 

1.業務手順マニュアル

動画マニュアルの中で最も汎用度の高いツールが、業務手順マニュアルです。製造業であれば作業工程を動画でナビゲーションすることで、作業効率の向上を図ることができます。サービス業であれば接客フローを動画で分かりやすくレクチャーすることで、顧客満足度の向上やクレーム減少につながるでしょう。

 

2.研修マニュアル

研修マニュアルは、新入社員研修などで用いられている動画マニュアルです。企業理念や社内ルール、ビジネスマナーの周知が主な目的です。経営陣のメッセージや企業ビジョン、進行中のプロジェクトなどを動画でプレゼンテーションすることにより、新入社員の企業理解やモチベーションを高めることが期待できます。また、名刺交換や電話対応といったビジネスマナーの指導も、テキストより動画の方がスムーズな理解を促せます。

 

 

3.営業マニュアル

営業マニュアルはセールスマニュアルとも呼ばれ、営業職の新入社員研修やスキルアップ研修に多く用いられています。営業マンは、個々のポリシーに基づいて営業手法を追究する傾向にありますが、動画マニュアルでトップセールスマンのノウハウを共有すれば、第三者的な視点で営業手法をブラッシュアップすることができます

 

 

動画マニュアルのメリット

近年、日常的な体験はオンラインに移行しており、膨大なページ数のテキストマニュアルに抵抗感を抱く人も少なくありません。動画マニュアルはあらゆる年齢層に受け入れられやすいツールといえるでしょう。ほかにも、下記のようなメリットが挙げられます。

視覚的に理解しやすい

文字や画像だけで構成されるテキストマニュアルと異なり、動きと音を伴う動画マニュアルは直感的な理解を促せるツールです。複雑な作業工程や言語化しにくい繊細なニュアンスも表現しやすい点が、最大のメリットでしょう。たとえば、熟練作業員の手の動かし方やセールスマンの声のトーン、調理の間合いなど、言語化すると曖昧になってしまう事柄も、動画であればありのままに表現できます。

 

また、外国人労働者を雇い入れている企業にとって、言葉の壁を超えて理解を促せる動画マニュアルは利用価値の高いツールです。

教育レベルに差が出にくい

全国に支社を持つ企業やチェーン展開する店舗が研修を実施する場合、拠点ごとに異なる担当者が指導するケースも少なくありません。そのような場合、研修の均一化を図ることは難しくなります。しかし、研修内容を統一化できる動画マニュアルであれば、担当者のスキルや研修日の状況に左右されない指導が可能となります。

時間や場所を問わず視聴できる

動画マニュアルをスクリーンで上映するケースもありますが、一般的にはサーバーやクラウドにアップしたり、メールで送信したり、オンライン上でシェアするケースが大半です。受講者は通常業務の空き時間に動画マニュアルを視聴できるだけでなく、不安な箇所をリピート再生することも可能です。そのため、マニュアル利用率や業務効率、学習効率の向上を期待できます

 

社外からも視聴できるようアクセス権を設定すれば、通勤時間を研修に活用することもできるでしょう。

コストを削減できる

紙ベースのマニュアルを制作する場合、印刷や配布にかかるコストや人件費を軽視することはできません。指導者や会場を抑える場合は、さらなる費用が発生するでしょう。

 

その点、動画マニュアルはいったん制作してしまえば配布にかかるコストを削減でき、繰り返し流用可能です。コストと手間を初期段階に集約し、ランニングコストを抑えることができます。

動画マニュアルのデメリット

動画マニュアルには多くのメリットがある半面、デメリットも生じます。動画マニュアル制作時は自社にとって有益か否か、メリットとデメリットの双方を勘案してみてください。

長いと内容が入りにくい

情報の詰め込みやトリミング不足によって動画マニュアルの尺が長くなってしまうと、視聴者に要点が伝わりづらく、集中力の低下を招きます。動画マニュアルは長尺編集に不向きなコンテンツといえるでしょう。

 

制作の際は情報を取捨選択し、5分程度に収めるのが理想的です。伝えたい要素が一本に収まりきらない場合は複数のコンテンツに分割し、カテゴリーごとに保存しましょう。各々にタグを付ければ、受講者が知りたい情報に直接アクセスできます。

初めて制作する際はコストや手間がかかる

動画マニュアル制作の初期段階は、撮影機材や編集ソフトの購入にコストが発生します。スマホや無料ソフトを活用することもできますが、ある程度の質を担保するには数万から数十万円の費用を見積もった方がよいでしょう。

 

また、外注・内製いずれの場合も人件費が発生します。動画制作に習熟した社員がいない場合、スキルを身につけるまでにも期間を要するでしょう。

動画マニュアルの作り方

ブランディング動画のようなクオリティを追求する必要はありませんが、「伝わらない」動画を制作してしまうと、コストと時間を無駄にしてしまいます。制作時は、下記のプロセスを踏んで、撮り直しのリスクを回避しましょう。第三者のフィードバックも有益です。

(1)構成を作成し、情報を収集する

基本的には、一動画につき一テーマが望ましいとされています。まずはテーマに沿って全体の流れを組み立て、必要な情報を収集しましょう。

 

▼課題を分析し、伝えたいポイントを整理する

なぜ動画マニュアルを作成するのか、誰に向けて配信するのか、制作によってどのような効果を得たいのか、「Why・Who・What」を意識しましょう。担当者の頭の中でイメージするだけでなく、社内の業務課題や達成目的を洗い出してみることをおすすめします。そうすることで、伝えるべき要素が明確になってくるでしょう。

 

(2)台本を作成する

伝えたい要素が明確になったら、それを基に台本を作成します。テキストでも絵コンテでも形式は問いません。習熟度の低い受講者も理解できるよう、静止画や図、イラストの挿入を検討します。

 

また、短時間でより多くの情報を伝えるためには、ナレーションが必須です。ただし、映像と無関係な情報まで盛り込んでしまうと理解度の低下につながるため、映像とリンクするよう配慮します。

 

プロのナレーターが読み上げる速度は、1分間に300~350字程度といわれていますが、動画マニュアルの場合、180字以内に設定することをおすすめします。映像を見ながら作業できるよう、間を設けることも必要です。

(3)動画を撮影する

動画撮影は、OJTや作業手順を撮影する場合もあれば、パソコン操作を録画する場合もあります。ストレスなく視聴できるよう、録画の際にはブレと光度に考慮しましょう。また、ハイアングルやローアングルなど複数のアングルで撮影しておくことをおすすめします。

(4)ナレーションを入れる

ナレーションは、動画の流れを先導したり、映像への理解を補助したり、学習効率を高める役割を担います。録画と同時進行せず、撮影済みの動画に合わせて録音します。

 

▼ナレーション収録の前に事前打ち合わせをする

録音前に、ナレーターと事前打ち合わせを行うようにしましょう。動画の趣旨や構成を説明し、事前にテキスト原稿や録音原稿を共有しておくと、録音がスムーズに運びます。話すスピードや抑揚、強調してほしいポイントなどのリクエストもあらかじめ伝えておきます

(5)編集する

台本を基に、撮影した動画をトリミングし、静止画や図、効果音などを挿入します。カットしたパートも、念のために一時保存しておくと安心でしょう。通勤中の電車内など音声を流せない環境下でも視聴できるようテロップの挿入は必須ですが、長文を目で追わなくていいよう端的な文章を心がけましょう。

 

閲覧環境を踏まえた編集も重要です。受講者が主にスマホで視聴する場合、テロップのフォントを大きめに設定する必要があります。スクリーンで上映する場合は、映像が粗くなってしまわないよう画質を高く設定します。また、タイトルの設定は動画内容が一目でわかるよう配慮しましょう。

動画マニュアルを作成できるツールやサービス

近年、動画マニュアル制作に特化したツールやサービスが続々とリリースされています。機能を比較検討して、目的にあったサービスを選択しましょう。多くのサービスはトライアル期間を設けているので、操作性を試してみることをおすすめします。

tebiki(テビキ)

OJTを撮影するだけで動画マニュアルを制作できるSaaS型サービスです。動画をアップロードすれば音声を認識し、字幕を自動生成。100か国以上の外国語に自動翻訳する機能も備えています。

 

操作性に優れているので、専門知識がなくてもトリミングや図形挿入が可能です。レポート機能を活用すれば視聴履歴や習熟度進捗を把握でき、研修担当者の業務負担軽減を実現できます。

Teachme Biz(ティーチミービズ)

国内トップクラスの売上シェアを誇るクラウド型マニュアル作成サービスです。簡単な操作で動画をトリミングできるほか、検索機能に優れており、QRコードを読み込むだけで必要な動画マニュアルを再生できます。指導担当者がつきっきりで新入社員をサポートする必要がなく、業務効率化を実現できます。

動画マニュアルを基にトレーニングコースを作成し、自主学習を促すことも可能です。受講状況や進捗状況をリアルタイムで把握できるので、高い学習効果を期待できるでしょう。動画作成から運用まで総合的にサポートしてくれるサービスです。

パワーポイント

多くの人が使い慣れているビジネスソフト「パワーポイント」を用いて、動画マニュアルを制作することも可能です。「スライドショー」の録画機能を用い、パワーポイント上のプレゼンテーションを音声入りの動画として記録する方法です。最後にエクスポートする際、画質を4種類から選べるので、パソコンやスマホなど、視聴環境に応じた設定が可能です。

 

また、Zoom会議でパワーポイントのプレゼンテーションを行い、それを記録しておけば、研修当日、出席できなかった受講者のための資料として活用できるでしょう。

動画マニュアルの事例

動画マニュアルの事例をピックアップしますので、撮影や編集の参考にしてみてください。

「Teams」使い方動画

Microsoftのビジネスチャットツール「Teams 」を活用し、学校行事をライブイベント配信する方法を解説しています。ナビゲーターがオフィスツアーをライブ配信するという形を採りながら、学校行事への応用方法を紹介しています。

 

「株式会社アマナ」shelf操作マニュアル

株式会社アマナが手掛ける制作管理ツール「Workspace」の操作マニュアルです。PC操作画面をベースにしたシンプルな構成で、端的なテロップや赤枠によって、操作手順を分かりやすくレクチャーしています。

動画マニュアルを活用し、業務効率化とコスト削減を叶えよう

これまで目を通してもらえなかったテキストマニュアルも、動画化することで視聴率の向上を図ることができます。検索や共有の機能を強化すれば、研修の履修率向上、ひいては社員のスキルアップや業務効率化を実現できるでしょう。

 

初期段階の投資と綿密な準備は必要ですが、長期的な視点に立てば動画マニュアルは費用対効果の高いツールです。マニュアル制作時は今回の記事を参考に、動画という選択肢も検討していただければ幸いです。