動画制作時に気になる著作権。著作権のある動画素材や動画制作時に気をつけたい注意点を解説

動画マーケティングの普及により動画コンテンツを制作する企業が増えていますが、それに伴って動画の著作権侵害が問題となっています。コンプライアンス遵守が叫ばれる昨今、著作権侵害の取締りは一層厳しくなり、検挙件数も上昇傾向にあります。動画を制作する上で、著作権問題の把握は必須事項といえるでしょう。今回は、著作権の基礎知識から、著作権を侵害しないための対策方法までご紹介します。

 

目次

  1. 著作権とは
    1. 著作権を侵害したらどうなる?
  2. 動画の著作権
  3. 著作権のある動画素材
    1. 画像(写真・イラスト)
    2. BGM・効果音
    3. キャラクター
    4. 海外コンテンツ
  4. 動画制作の際に気をつけたい著作権の注意点
    1. 制作会社に依頼するなら著作権の帰属先を明確にする
    2. 背景に著作物が写り込まないように注意する
    3. 音楽素材を使用する際には適切な手続きをする
    4. 肖像権にも注意。自社社員であっても許諾を得る
  5. よくあるYouTube動画の著作権はどこまでがセーフ?
    1. 歌ってみた・弾いてみた動画
    2. ゲーム実況動画
    3. 絵本の読み聞かせ・朗読動画
  6. 動画制作の際には動画の著作権について理解しよう

著作権とは 

著作権法においては、思想や感情を創作的に表現したものを「著作物」とみなし、それを保護するための権利が「著作権」です。動画の世界では、アイディアや模倣物は著作物に見なされませんが、オリジナルで制作した動画はすべて著作物に該当します。

 

申請が必要な特許と異なり、著作権は創作と同時に自動的に発生します。著作物を著作権者に無断で使用することはできませんが、著作権者から利用の許諾や著作権の譲渡を受けることで利用が可能となります。

(参考:文化庁「著作権制度の概要」)

著作権を侵害したらどうなる?

動画の著作権侵害が明らかになれば、公開停止は避けられないばかりか、アカウント凍結などの措置が講じられ、最悪、訴訟問題に発展します。刑法上の定めがない肖像権とは異なり、著作権侵害の場合は民事のみならず刑事上の責任が発生します。著作権侵害の罰則は、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方ですが、法人の場合はさらに罪が重く、3億円以下の罰金が科せられます。そうなれば社会的信用が失墜し、企業活動に支障の出る恐れがあるため、著作権侵害のリスクはなんとしても避けたいところです。

動画の著作権

著作権は「著作者」に帰属するため、動画の世界においては、プロデューサーや監督など、全体的な創作に寄与した人物に付与されます。ただし、以下の要件を満たした場合は法人著作が認められます。

 

 

  ・法人の発意・立案によって制作されるもの

  ・法人の業務に従事する者によって、職務上制作されるもの

  ・法人等の名義で公表されるもの

  ・契約や就業規則により、職員を著作者とする定めがないこと

 

 

著作権のある動画素材

動画に使用する素材も著作権で保護されている可能性があります。たとえば、写真やイラスト、音楽、キャラクター、ロゴ、キャッチコピー等が該当します。動画用に新たに制作した素材も例外ではありません。動画に使用する際は、素材が著作権フリーであることを確認するか、著作権者の許諾を得る必要があります。

画像(写真・イラスト)

動画に写真やイラストを使用する場合、有償・無償で提供するサイトからダウンロードするという方法があります。しかし中には、クレジット表記の義務付けや、商用利用の制限など、さまざまな条件が付帯されている場合があるため、利用規約の確認が必要です。また、カメラマンやイラストレーターに素材の制作を依頼した場合は、著作権譲渡契約書もしくは使用許諾契約書を交わして、トラブルのリスクを回避しましょう。

BGM・効果音

楽曲の著作権について触れる際、「クラシック音楽には著作権の保護がない」という話をよく耳にします。これは、著作権の保護期間が、原則的に著作者の死後70年までと定められているからです。ならば、クラシック曲は自由に使用していいかというとそうではありません。クラシック曲であっても、演奏したアーティストやレコード会社に認められる著作隣接権を侵害する可能性があります。また、著作権フリーの楽曲についても、商用利用や加工の可否は確認が必要です。

キャラクター

キャラクターの無断使用はもちろん、キャラクターを模倣したパロディデザインも、著作権侵害の恐れがあります。また、キャラクターは商標登録されている可能性も考えられます。商標権を侵害した場合は、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科せられ、商標権を侵害したと見なされる行為をした場合の罰則は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金と定められています。キャラクターを使用する場合は著作者を確認し、許諾を得て合法的に使用しなければなりません。

海外コンテンツ

国外で制作されたコンテンツも、法律によって著作権が保護されています。たとえば、160カ国以上の国が加盟しているベルヌ条約は、音楽や美術などの著作権を国際的に保護する基本条約です。また日本は、ユネスコの提唱によって作成された万国著作権条約にも加入しており、著作物の国際的な保護が行われています。そのため海外コンテンツを使用する場合も、原則として著作権者の許諾が必要です。

 

(参考:公益社団法人著作権情報センター「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(抄)」「万国著作権条約パリ改正条約」)

動画制作の際に気をつけたい著作権の注意点

動画制作を第三者に依頼した場合、著作権が自分の手を離れてしまうケースがありますので、事前の確認を行いましょう。また、動画撮影の際には、著作権のみならず肖像権にも配慮する必要があります。

制作会社に依頼するなら著作権の帰属先を明確にする

動画制作会社に依頼する場合、基本的にその企業が保有している素材で動画を制作してくれるため、著作権侵害のリスクを排除できます。しかし日本では、著作権は著作者が有するという創作者主義の立場を採用しているため、動画の著作権は制作会社に帰属するという解釈が成り立ちます。発注元が動画を二次使用する場合、制作会社に許諾を得なくてはならず、運用効率が悪くなってしまいます。それを避けるためには、業務委託契約書で動画利用の用途や期間を明文化する、もしくは著作権を買い取るという方法をとらなくてはなりません

背景に著作物が写り込まないように注意する

動画視聴が浸透する中、2020年の法改正によって「写り込み」に係る権利制限規定の範囲が拡充されました。改正後の規定によると、写り込みが「著作権者の利益を不当に害するもの」でなく「軽微な構成部分にとどまるもの」であれば、違法行為には当たらないとしています。ただし、著作権者から権利を主張された場合は、個々の事案ごとに判断が下されるため、不要なリスクは回避しましょう。

 

著作物の分離が難しい場合は、著作権者の許諾を得るか、編集で消去するなどの対策を行っておくと安心です。また、法的に撮影許諾が必要な建物も存在するため注意しましょう。

 

(参考:文化庁「いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について」)

音楽素材を使用する際には適切な手続きをする

楽曲の著作権の多くは、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)が管理しています。個人が非商用目的で動画を制作する場合、YouTubeやニコニコ動画などのUGCはJASRACと包括契約を結んでいるため、楽曲利用に特別な許諾は必要ありません。しかし商用利用の場合は、JASRACのホームページから使用許諾の手続きを行いましょう。動画編集ソフトの素材を使用するのも一つの方法です。

 

(参考:JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)「音楽著作権とは」)

肖像権にも注意。自社社員であっても許諾を得る

肖像権とは、容姿を無断で撮影されたり、公表・利用されたりしないための人権です。法律上の定義はありませんが、肖像権を侵害した場合は民事訴訟に発展し、名誉毀損罪や侮辱罪等に問われる可能性があります。個人情報やプライバシー保護に対する意識が高まる中、肖像権ケアは基本的なマナーといえるでしょう。人を撮影する場合には、自社社員であっても事前の同意が必要です。社員の退職後も公開できるよう、許諾契約書を交わしておきましょう。

 

(参考:一般社団法人 日本音楽事業者協会「肖像権について考えよう」)

 

動画制作における肖像権とは

たとえ自分の子どもであっても、無断に撮影・公開すれば肖像権侵害に当たります。動画撮影の際は、出演者以外の人が映り込まないよう段取りを行うのが理想的です。万が一写り込んでしまった場合は、モザイクやぼかしなどの加工によって肖像権侵害のリスクを排除しましょう。

よくあるYouTube動画の著作権はどこまでがセーフ?

2021年3月、YouTubeでは動画のアップロード時に著作権侵害の有無を自動的にチェックする機能が追加されました。しかし、コストと労力を費やして制作した動画がアップロードできないとなると大きな痛手です。制作前や制作中の段階で、著作権侵害を防ぐ手立てを行いましょう。

歌ってみた・弾いてみた動画

YouTubeの人気コンテンツ「歌ってみた」「弾いてみた」動画は、ヒット曲をカバーする傾向にあり、トラブルになるケースも少なくありません。著作権・著作隣接権侵害に当たるのは、下記の事例です。

 

 

  ・JASRAC管理外の楽曲を使用した場合

  ・CDやライブの音源を使用した場合

  ・カラオケ店の音源を使用した場合

 

 

CDやライブの音源を使用した場合、たとえそれがJASRACが管理する楽曲であっても、著作隣接権に抵触する可能性があります。

 

著作権・著作隣接権を侵害しないためには、主に以下の方法が考えられます。

 

 

  ・JASRACが管理している楽曲を使用する

  ・利用許諾のあるオフボーカル曲を使用する

 

 

ゲーム実況動画

映画の無断アップロードはすべて違法ですが、ゲームの場合はメーカーやタイトルによって異なるガイドラインが設けられています。動画配信の収益化を認めているゲームもあれば、動画配信は許可していても切り抜き投稿は認められていないゲームもあり、ケースバイケースです。公式ホームページ等で細かな条件まで確認してから配信しましょう。

絵本の読み聞かせ・朗読動画

絵本も楽曲同様、著作権の保護期間は原則として著作者の死後70年までと定められています。絵本の読み聞かせ動画を投稿した場合、その作品の著作権が切れていなければ、著作権侵害の可能性があります。また、動画内で絵を映していた場合、公衆送信権や複製権等の侵害に該当します。日本児童出版美術家連盟は、読み聞かせが児童文学の普及に寄与しているとしながらも著作権の保護を呼び掛けており、特設サイトで配信上のルールや許諾方法について案内しています。

 

(参考:日本児童出版美術家連盟 特設サイト

 

【合法な読み聞かせ動画実例】

 

児童書の出版社「フレーベル館」では、公式チャンネル「べるくまのえほん読み聞かせパーク」を開設し、読み聞かせの動画コンテンツを配信しています。

個人で読み聞かせ動画を配信する場合は、出版社のガイドラインを確認し、必要であれば使用許諾の申請を行います。また、インターネット電子図書館「青空文庫」では、著作権の保護期間が満了した作品について使用を許可しています。

動画制作の際には動画の著作権について理解しよう  

動画制作において著作権は最低限押さえておくべきルールであり、著作権問題をスルーしたまま動画制作に臨むのは、無免許で車を運転するようなものだといえるでしょう。法人であれば社会的信用を失墜しないためにも、動画制作担当者には高いリテラシーが求められます。著作権問題をクリアして、自由度の高い動画運用を実現してください。