Unreal Engineの企業事例を紹介。ゲーム分野以外での可能性や活用のメリット

Unreal Engineはゲーム制作のために開発されたゲームエンジンですが、ゲーム業界以外の分野でのビジネス用途としても広く活用されています。映像表現における技術の進歩に伴い、リアルタイム性とインタラクティブ性を備えた3DCGの重要度が高まっており、建築や自動車の設計、トレーニング、シミュレーションなどさまざまな業界でUnreal Engineの活用が進んでいます。この記事では、Unreal Engineのメリットや特徴を、ゲーム業界以外の分野での実際の企業事例と合わせて紹介します。

 

目次

  1. Unreal Engineとは
  2. Unreal Engineはゲーム開発以外でも注目
  3. Unreal Engineの企業事例
    1. 建築業界の企業事例
    2. 自動車業界の企業事例
    3. 映像業界の企業事例
    4. 航空業界の企業事例
    5. 医薬品業界の企業事例
  4. Unreal Engineをゲーム分野以外で活用するメリット
    1. コストと時間の大幅な削減
    2. インタラクティブ性を生かした開発が可能
    3. グラフィック品質の高さ
    4. 非エンジニアの作業を支援する機能
  5. Unreal Engineはさまざまな分野で活用できる

Unreal Engineとは

Unreal Engine(アンリアルエンジン)とは、アメリカのEpic Games社が提供しているゲーム開発ができるゲームエンジンです。略してUEと表記され、全ての機能を無料で使用できます。同社の代表的作品であるオンラインゲーム「FORTNITE」もUnreal Engineで制作されているほか、同業他社が開発したゲームの開発ソフトにも採用されています。ゲーム以外にも、建築や自動車の設計、トレーニングのシミュレーションツール、VR空間の制作など幅広い分野で活用されています。

 

Unreal Engineはゲーム開発以外でも注目

Unreal Engineは、ゲーム開発以外(非ゲーム分野)のビジネス用途にも活用されるなど注目を集めています。質の高いグラフィック性能を有することから、自動車や建築の設計、医療手術のシミュレーションツール、宇宙開発など、その活用方法は実にさまざまです。オンライン技術やデジタル技術が進化する現代において、ハイクラスの3D制作ができるUnreal Engineの活用は広がりを見せています。

Unreal Engineの企業事例

次に、Unreal Engineの企業での活用事例を紹介します。

建築業界の企業事例

XR(VR・AR・MR)開発やCGパース制作などを行う「株式会社積木製作」では、Unreal Engineを使ってリアルタイムコンテンツの制作を行いました。3dsMaxとV-Rayで作ったパースを、Datasmithを使いUnreal Engineにデータをインポートして制作しています。CGパースやシアタームービー、VRウォークスルー、眺望シミュレーションなど複数のマルチメディアコンテンツを共通した3Dデータとして管理することにより、それぞれの開発ごとにかかっていた制作コストの削減に成功した事例です。

自動車業界の企業事例

「Volvo Cars」は、Unreal Engineを使って電気自動車向けのヒューマンマシンインターフェイス「HMI」を構築しています。新しいHMIにより、安全の向上につながるさまざまな機能が備わり、ドライバーは周囲の状況を把握しやすくなるほか、衝突事故の防止などにも役立っています。また、同社は自社の車両ビジュアルを大幅にアップグレードすると発表しており、欧州の自動車メーカーとして初めてEpic Games社と提携してグラフィックスの改善を図っています。

(参照:Unreal Engine「衝突ゼロへの道:Volvo Cars の新しい電気自動車向け HMI プログラムの舞台裏」)

映像業界の企業事例

韓国のビデオ制作サービス会社「WYSIWYG STUDIOS」は、SF映画の制作におけるプレビズ(Pre Visualization)にUnreal Engineを採用しています。CG映像の完成度を左右するといわれているプレビズにUnreal Engineを使ったことで、品質の向上はもちろん、制作チーム全体で構成やイメージの確認ができ、多くの時間とコスト削減に役立った事例です。

(参照:Unreal Engine「Netflix の大ヒット作「Space Sweepers」 は、リアルタイム プレビズに Unreal Engine を利用しています」)

航空業界の企業事例

フィンランドの航空会社「フィンエアー」では、空港スタッフの仕事体験デモや新人向けトレーニングシミュレーションに、Unreal Engineを使用したリアルタイムでのVRを制作しています。CXの向上やトレーニングシステムへの支出を抑えることに成功しています。

(参照:Unreal Engine「VR での航空機シミュレーションで航空会社の業務を合理化」)

医薬品業界の企業事例

医薬品の研究開発を行なっている「C4X Discovery」は、新薬の構想から市場投入までのプロセスをより迅速に進めるための手段としてUnreal Engineを活用しています。分子の3Dモデルを制作し、開発者が従来と異なる視点で扱えることで新薬の創出につなげています。

(参照:Unreal Engine「アンリアル エンジンの活用が新薬発見のかたちを変える」)

Unreal Engineをゲーム分野以外で活用するメリット

Unreal Engineをゲーム以外の分野で活用するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。主な4つのメリットについて紹介します。

コストと時間の大幅な削減

Unreal Engineを使用することで、映像制作の課題であるレンダリング時間の短縮とコストを大幅に削減できるのがメリットです。Unreal Engineのリアルタイムレンダリングでは、コンピューターがリアルタイムで計算しその場で映像として出力してくれるため、事前に映像を出すプリレンダリングと異なりレンダリングを待たずに行えます。作業効率の向上に伴うコスト削減に効果があります。

インタラクティブ性を生かした開発が可能

Unreal Engineでは、ゲームエンジンならではのインタラクティブ性を生かした開発や表現ができます。プレイヤーの選択に対して瞬時に反応するゲームのように、リアルタイム性のある反応を演出できるのは大きなメリットといえます。近年、技術の進歩やデバイスへの対応が進んだことで、ゲーム以外の映像表現においてもリアルタイムでのインタラクティブ性が重要視されています。

グラフィック品質の高さ

Unreal Engineを活用することで、グラフィック品質の高い描画が実現できます。リアルタイムによる高速な開発検証やイテレーションが可能になったことで、これまで実物で作っていた試作品をデジタル化してコスト削減を図るケースも増えています。より実物に近い高品質なグラフィックの再現が可能なUnreal Engineならではのメリットといえます。

非エンジニアの作業を支援する機能

Unreal Engineには、「ブループリント」や「シーケンサー」など、非エンジニアの作業を支援する機能が実装されています。プログラマーがいない企業の場合でも、開発に必要なツールや機能が備わっているので、デザイナーやプランナーがアイデアを実現できるのがメリットです。

Unreal Engineはさまざまな分野で活用できる

ゲーム業界以外での活用が進むUnreal Engineのメリットや特徴を、実際の企業の活用事例と合わせて紹介しました。美しさに定評のある高品質のグラフィック性能やプログラミングなしで行えるゲーム開発機能の実装などにより、Unreal Engineの活用領域はさまざまな業界に広がりを見せています。ゲーム分野以外の業界でもUnreal Engineの活用を検討してみてはいかがでしょうか。